「ザ・ルイガンズ.スパ & リゾート」
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INTERVIEW

すべてのお客様を、「自分の家族や友達と同じくらい大切な人」として、もてなしたい。

第十九回
ザ・ルイガンズ.スパ & リゾート 宿泊マネージャー
魚留聡

2019.02.25

福岡という街は、実にコンパクトにできている。街の中心の一つである博多駅から福岡空港までは地下鉄でたったの10分。海も近いし、山も近い。ちょっと足を延ばせば極上の温泉地も無数にある。食事も安くて美味しいし、街もスタイリッシュである。東京人からしたら、実に羨ましい街なのだ。 そして、今回取材で訪れた「ザ・ルイガンズ.スパ & リゾート」も、博多駅から車でたった30分ながら、解放感に満ち溢れた堂々たるリゾートホテルである。ここで我々スイッチブライト取材班は、ホテルの仕事をこよなく愛する素晴らしいホテルパーソンたちに出会った。

「もっとやろうぜ!」が接客の合言葉

魚留さんは、ラガーマンである。 学生時代、ラガーシャツをまとって必死にボールを運ぶ姿が容易にイメージできる、絵にかいたようなナイスなスポーツマンだ。

大学3年生で本格的に就職活動が始まるころ、魚留さんは、スポーツ関係の仕事に就きたいと漠然と考えていた。これまでもスポーツの世界だけに生きてきた。これからもずっとスポーツの世界に居続ければ、とても居心地がよいし、やりたい仕事に就けるに違いない。ずっとそう考えていた。一方で、逆を考えれば、スポーツの世界しか知らない自分に不安を抱いてしまった。

「ほかの世界も見てみよう。そのあとでも、スポーツの世界が一番いいと感じたら、スポーツの世界に進めばいい」

そう思って、業界・業種関係なく就職活動に取り組んだ。 「就職とは? 仕事とは?」「世の中にはどんな仕事があるんだろう」「そこで働いている人がどんなやりがいを感じているんだろう」……、そんな好奇心から、いろんな業界、いろんな会社、いろんな人に会いに行った。

就職活動を進めるうち、自分の軸、つまり仕事を選ぶ基準を考えたとき、「若いうちから責任を持ってチャレンジできる仕事」という自身のこだわりにたどり着いた。

Plan・Do・Seeという会社に出会ったのは、そんなタイミングのことだった。ザ・ルイガンズ.スパ & リゾートをはじめ、全国でホテルやブライダル施設を経営・運営するPlan・Do・Seeという会社である。それまで、「飲食・サービス」はまったく選択肢には入っていなかったが、この会社を調べれば調べるほど、そして、Plan・Do・Seeで働く人と話せば話すほど、この会社の魅力を感じ、いつしか虜になっていった。

美味しいもの食べながら、仲間と一緒に過ごせる場所づくり

Plan・Do・Seeを第一志望にした決め手は、何だったのだろうか。

「『毎日好きなことをして生きていきたい』と考えたとき、美味しいものを食べているときと、仲間と一緒にワイワイ過ごしているときが一番幸せを感じていることに気づき、そういう時間を過ごせる場所を作る仕事を自分ができたら、自分がそこで過ごすことと同じ経験ができるのではと思って、『場作り』ができる仕事をしようと決めました。形のない、完成することのない商品を、面白がって進化させ続けることも楽しめそうだ。そう確信して、志望することを決めました」

狭き門ながら、見事、新卒で採用されてPlan・Do・Seeに入社した魚留さんは、 レストランウェディングの店舗で希望の「ダイニング」に配属された。その後、日本各地の店舗でダイニングやキッチン、ダイニングマネージャーを担当、そして、キャスティング(人事)の部門も経験した。そのほか、ウェディングプランナー、コンサルティング、宿泊の経験も重ね、3年前、ルイガンズへ。数えてみたら入社からこれまでに経験した数は8店舗11部署にもなっていた。

形のない、いつまでも不完全なものを扱う楽しさ

いろんな仕事を経験された魚留さんは、ホテルやブライダルの仕事の、いったいどんな醍醐味を感じているのだろうか。

「ホテルで働く魅力は、雛形のない仕事であり、お客さまが百人いれば百通りの過ごし方があります。だから、正解なんてないんです。お客さまの情報、容姿や雰囲気、会話から得る情報、そのほかありとあらゆる情報を探って、相手をとことん考え、自分の全人格をかけて行動する。毎回状況が違うから描くシナリオも違ってくる。そうやって、毎回頑張る。完璧なものにたどり着くことは永遠に無理。それでも今自分が最高だと思えることをやり続けていく。形のない、いつまでも不完全なものを扱う楽しさ、それがサービス業の醍醐味だと思います」

ホテルのなかには、スタッフが精いっぱいお客さまのために行動しているのに、上司から「そこまでやる必要はない」と言われてしまうホテルもある。しかし、Plan・Do・Seeの現場では、そんな発言は一切ないという。

「お客さまをご案内するとき、家族や仲のいい友達が来たと思いながら接客しています。『もっともっとやろうぜ』という社風なので『そこまでしなくても…』なんていう発言は聞いたことがないですね」

生涯忘れられない一日のために

「もっともっとやろうぜ!」、この合言葉を象徴するようなエピソードがある。

福岡に住む魚留さんの友人から、「ルイガンズで、プロポーズをしたいので、手伝ってもらえないだろうか」という相談を受けた。当時、魚留さんは神戸にある別の施設で働いていたが、当時のルイガンズの総支配人とその友人とで、何カ月もかけてアイデアを出し合った。その結果、実行したのは、こんなことだった。

決行の日は、彼女の25回目の誕生日。 まず、彼女が仕事から帰宅すると、自宅の机の上にメッセージレターが置かれていた。そこには、「クローゼットの中を見てください。今日は特別な一日を過ごしてほしいから、特別な服を用意しました」と書いてある。彼女がクローゼットを開けると、ドレスと靴があった。それを着て外に出ると、外では、運転手付きのハイヤーの前で、彼氏がタキシードをまとって待っていた。

ハイヤーは、走り出すと、いろんな場所を巡った。二人の想い出の場所、彼女の実家、二人の共通の友人宅など。その数は24か所にも及んだ。そして、その都度、薔薇の花を渡された。

25か所目がルイガンズだった。 彼氏は車を降りると、25本目のバラの花を手渡して、「誕生日、おめでとう。今日は、ここで記念の食事を用意しているんだ」と言って、彼女を中に促した。夜景の美しい最上階にいくと、小さなバンケットルームの真ん中に二人だけの席が用意されていた。専任ウエイターは、魚留さんだった。

メインディッシュを食べ終わるタイミングで、突然、窓の外に大きな花火が上がった。彼女は驚きつつうっとりしながら花火を楽しむ。すべての花火が夜空に消えてなくなると、横にいた彼氏が、ダイヤモンドが輝くエンゲージリングの入った小箱を開けた。

「結婚しよう」

彼女の答えはもちろん、「よろしくお願いします」だった。

その一言があった次の瞬間、後ろの扉がバッと開いた。 そして、今日ハイヤーで立ち寄ってきた人全員が二人のところになだれ込んできた。 小さなバンケットルームは、「おめでとう」の声がこだました。

この日の演出に全力を尽くしてくれたホテルスタッフ、特別ディナーを作ってくれたシェフ、二人のためだけにオリジナルカクテルを捜索してくれたバーテンダーなど、チームの多くの力が結束して、この忘れがたい一日の演出が成功した。

「この一体感がたまらない」。魚留さんは、満面の笑みでこう言った。

食べること、旅すること、そして人の喜びが嬉しい人。

最後に、「ホテルの仕事に向いている人は、どんなことでしょう」と質問してみた。

「食べることが好きな人、旅をすることが好きな人でしょうか。そして、最も重要なのは、お客さまが喜ばれることが、自分の喜びになるということです。これがあれば、ホテルのどんな仕事をしていても楽しいと思えるのです。例えば、掃除をしていても、それがお客さまの快適な滞在につながると思えるから。

Information

ザ・ルイガンズ.スパ & リゾート

  • 住所:〒811-0321 福岡県福岡市東区西戸崎18-25
  • 電話番号:092-603-2525
  • ウェブサイト:https://www.luigans.com/
  • 客室数:101室

ルームスディヴィジョン マネージャー
魚留聡氏 Satoshi Uodome
1983年大分県生まれ、兵庫県西宮市育ち。立命館大学卒業後2006年(株)Plan・Do・Seeに入社。 THE HOUSE OF PACIFIC(神戸)、THE GARDEN ORIENTAL SOSHUEN(神戸)、 WITH THE STYLE(福岡)、THE FUJIYA GOHONJIN(長野)、ORIENTAL HOTEL(神戸)等、 8店舗にわたってダイニング、宿泊、ブライダル、キッチン、と現場を幅広く経験し、ダイニングマネージャーや出向先の横浜の某ホテルにてマネジメントコンサルタントを歴任した後、3年前にザ・ルイガンズ.スパ & リゾート宿泊部門のマネージャーに就任。 現在は2019年1月よりHÔTEL du PARC HANOÏ (ベトナム)に勤務、Plan・Do・Seeが手がけるホテルの初の海外進出を牽引している。

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Staff Interview

お客さまの人生に寄り添える場所

カスタマーリレーションズ マネージャー 福谷 ひかりさん

学生時代は経済学部に在籍していたこともあり、特に深く考えることもなく就職活動をして金融企業から内定を得ました。ところが、ある時ふと立ち寄ったホテル業界の会社説明会に心を奪われました。キラキラと輝いているサービススタッフの姿。こんなにも人が楽しそうに働ける仕事があるのかと、ある種の衝撃を受けました。急遽方向転換をし、金融企業の内定を断って、アルバイト採用でルイガンズに飛び込みました。

当初は、休みが不定期なことや労働時間が不規則なことに、少しだけ不安に感じたのも事実です。でも、自分自身の中で一番大切にしたのは、「やりたいこと」と「ヤリガイ」。今では不定期な休みも上手く活用できています。休日は学びも兼ねて様々なホテルを訪れて、カフェでくつろいでいます。 お客さまの滞在時の満足度は、ホテルスタッフの対応によって大きく変わります。我々が担う役割はホテルという建物が提供する価値よりもずっと大きい。そんなことを大事に思いながら仕事を続けていると、私に会いに来てくれるお客さまが増えてくる。節目節目でルイガンズにやってくる。ホテルとは、お客さまの人生に寄り添える場所なんですね。だから、ホテルって、無くなってはいけないと思います。卒業した母校と同じように、想い出と、自分が生きた証がそこには、たくさんあるのだから。

人に関わりたい。人を幸せにしたい。お客さまの人生にとって特別な日を演出したいと思っています。今、私は自信を持って、それができていると言えます。ホテルに、ルイガンズに感謝です。ルイガンズが私を変えました。自分の人生の選択は間違っていなかったと胸を張って言えます。

これから先も、お客さまの人生に寄り添えていると実感できる仕事をしたい。夢を語り合える仲間と一緒に歩み続けたいと思います。

Staff Interview

心と心が通じ合い、そこに笑顔があれば言葉の壁は越えられる

ルームスディビジョン 田上 凌さん

幼いころから人の役に立ちたい、人の役に立てる仕事に就きたいと考えていました。就職活動のタイミングで自分自身を振り返ったときに、接客業がよいのではないかと思ったのです。誰かのために何かをして、その結果が目に見えたとき、自分は嬉しさを感じることに気が付いたからです。

接客業ならばホテルだと考えました。英語の成績が学生時代は良くなかったので、不安はありましたが、実際にホテルの現場に 出てみると、使う文法は中学生レベルで十分でした。どうしても英語を使わなければならない接客の現場で、少しずつですが話せるようになってきました。もちろん、上手く伝わらないこともありますが、心と心が通じ合い、そこに笑顔があれば言葉の壁は越えられるということを実感しています。だからこそ、お客さまを観察すること、積極的に傾聴をすることで、言葉以外の情報を得る力が求められるのです。

ルイガンズは、ルールだけではなくお客様によって臨機応変に動ける環境です。様々な情報をしっかりと頭に入れて、接客に活かす工夫をしています。準備力とでも言えばいいでしょうか。そんなことを考えて準備する時間は、とても楽しいですね。どんな仕事でも辛いことは多いと思いますが、お客さまの笑顔を見ると、嫌なこと、キツイことも忘れられる。だからこの仕事は面白いですし、続けることができます。

今後さらに伸ばしたいスキルは日本語力。日本人として、美しい言葉を使いたい。母国語をしっかり理解することで、外国語の表現力も増すと思うからです。そして将来は、ホテル業の楽しさをもっともっと伝えていって、ひとりでも多くこの業界を目指す人を増やしていきたいですね。

Message

人生の先輩から若者に向けて
「仕事や人生を楽しむコツ」とは?

感情力

ザ・ルイガンズ.スパ & リゾート
宿泊マネージャー
魚留聡氏 Satoshi Uodome

Editor's Note編集後記

「若いうちから責任を持ってチャレンジできる仕事」SWITCH BRIGHTの取材も今回で19回目を迎え、毎回ホテルで働こうと思ったきっかけをお聞きするが、魚留マネージャーの解答は今までとは少し違う角度からの解答だった。そして、『形のない、完成することのない商品を、面白がって進化させ続けること…』も魚留マネージャーを象徴するようなセリフだった。自身がその ’’形が無く完成することのない商品’’ の楽しみ方を知っているからこそのセリフだ。 取材を終え帰路につく取材クルーを従業員の皆さんが大きく手を振り最高の笑顔で元気に見送ってくださった。お客様と触れ合う接客のその瞬間だけではなく、場作りの準備にも余念なくフルスイングする皆さんの姿が想像できた。取材を通してエネルギーをもらった。
山本拓嗣

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