旅館で働く前は、旅館は格式が高いのでお客さまとの距離が遠いのかなと思っていましたが、まったくそんなことはないことが働いてみて分かりました。以前私は飲食店で働いていたのですが、それに比べるとお客さまと接する時間も長いですし、いろんなお話ができます。それに、さまざまなお客さまが、さまざまなエリアからお越しになるので、仕事はとても楽しいです。
やはり、お客さまが笑顔で帰ってくださることが、自分の達成感に繋がります。「来て良かった。こんな素敵な旅館は初めてですし、こんな美味しい料理も初めて。次もまた来るね」など言ってくださるととても嬉しいですね。
働き始めて4年になりますが、ようやっとお客さまの気持ちを当てられるようになりました。ご到着され、まず客室に行って挨拶をしますが、そこで印象を感じます。挨拶だけして早く出てほしいというお客さまもいれば、もっとお話ししたいというお客さまもいらっしゃいます。料理のご提供も、お客さまが前の料理を食べ終わるタイミングも分かってきました。説明をしながら出した方が喜ばれるお客さまもいれば、説明がいらないお客さまもいらっしゃいます。笑顔を絶やさずに話しをしていると、お客さまが何を求めていらっしゃるかが大よそ分かってきます。
旅館の仕事は、お客さまの喜びがこちらの喜びになる仕事です。確かに、勤務時間が不規則だったり、重い物を持ったり、しんどいと感じることもありますが、それ以上に「このお客さまに会えてよかった」と思えた瞬間、私はその束の間の大変さを忘れてしまいます。お客さまの喜びが私のストレス解消になっています。
私自身が、次の休暇に道後温泉に行こうと計画を立てていたとき、たまたま道後温泉から来られたお客さまを担当したことがありました。普段は、私がお客さまから有馬温泉のことを聞かれてお勧めスポットなどをお答えするのですが、そのお客さまには、逆に私が道後温泉のお勧めスポットを聞いてしまう展開になってしまったんです。すると、そのお客さまは、わざわざ私のために、メモ書きをして詳しく教えてくださいました。このような感じで、お客さまとすぐに親しくなれる、楽しい仕事だと思っています。