「HOTEL LOCUS」
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INTERVIEW

自分なりのリゾートライフを見つけられると、それがホテルパーソンとしての価値になる。

第十六回
株式会社 HOTEL LOCUS 総支配人 
鎌田信明

2018.08.24

2018年1月、沖縄・宮古島に、小ぶりだけれど、上質なセンス溢れるスタイルホテルが誕生した。ホテルを拠点に島全体の様々なアクティビティを体験し島の魅力を存分に感じてもらう体験型リゾート「HOTEL LOCUS」だ。ホテルスタッフは、全員島旅のナビゲーターとなり自分が知っている島の魅力をお客さまにご案内する。今回のSwitch Brightは、この新しいホテル「HOTEL LOCUS」を取材、離島で働く魅力、やりがいを中心に紹介したい。

自分で感じた島の魅力を自分の言葉で伝える

宮古島(みやこじま)は、沖縄本島から南西に約300km、太平洋と東シナ海の間に浮かぶ人口5.4万人の小さな島。亜熱帯海洋性気候で年平均気温 23.6°Cと温暖で、南国の花々が美しく咲き、海岸線には白いビーチとサンゴ礁のある浅瀬が広がっている。我々日本人が想像する南の島そのものだ。

当然ながら、都会にあるような娯楽施設は島にはほとんどない。その代わり、豊かで多彩な自然の魅力、色濃い島の文化といった、都会では味わえない魅力がたくさんある。そんな離島のリゾートホテルで働く魅力は何だろうか。まずは宮古島住民歴11年の鎌田信明総支配人に話を聞いた。

鎌田総支配人が感じている離島のリゾートホテルで働く魅力は、どんなことが挙げられますか

「お客さまは、非日常を求めてここにやってきます。ちょっとした小旅行、海外旅行に行く感覚です。トロピカルブルーの海、宮古牛をはじめとした島ならではの食、サトウキビ畑の間を突っ走るドライブ、多彩な民芸品のお土産など、ここには、都会にはない非日常を感じる素材が無数にあります。それを自分たちが体験し、楽しんで、自分の言葉で紹介する。これがここで働く面白さであり、同時に使命だと思っています」

HOTEL LOCUSのスタッフは、ゲストから「どこに行ったら面白いか、どこに行けば島の料理が食べられるか」といった質問を頻繁に受ける。スタッフ自らが宮古独特のカルチャーや魅力を熟知し、それをゲストに伝える。また、聞かれなくてもゲストに伝えたいと思って率先してご案内してしまう。そんな接客が離島リゾートで働く面白さだと鎌田総支配人は語る。

「マリンスポーツ以外にも、離島にはいろんな観光素材がとにかくたくさんあり、それらの魅力をしっかり伝えていく。宮古島は、日本であって日本ではない。沖縄であって沖縄ではない、独特の文化と伝統があります。働くスタッフの資質が一つあるとすれば、都会にあるような娯楽がないことは気にしないで、島に溶け込んで自分なりのライフスタイルを創れるかどうかだと感じています」

自分だけの島ライフを見つけられるとはまってしまう

宮古島のような離島に来て、居心地の良さを感じてはまってしまい、長く続く人がいるという。しかし、その一方で、すぐに島を離れて都会に戻ってしまう人もいるという。その共通点は、どんなことがあるのだろうか。

「長くいる人の共通点は、趣味を持っている人でしょうか。ゴルフが趣味の人、ダイビングが趣味の人、サーフィンが好きな人などは離島ライフを満喫しますし、長くいるどころか、いつしか島の人と見間違うくらいに同化してしまいます。逆に、休みの日に部屋でテレビを見ていたり、パチンコで時間をつぶしていたりする人は、往々にして、すぐに島を離れてしまう傾向にあります。都会にはない島の魅力は探せばいくらでも出てきます。それを見つけられ、自分のライフスタイル、ここでしかできない自分だけのライフスタイルを見出せるかどうかですね」

鎌田総支配人も、実はサーファーなのだそうだ。 ホテルで働きたいからとか、宮古島が好きだからとか、そういった理由で宮古島のホテルで働いているのではなく「サーフィンがしたくて離島に移り住んだ」という。今でも、週に1〜2回は波乗りに行く。宮古島は小さな島なので、島のどこかでいい波が出ていればすぐにそこに行ってボードを出せるのだ。

マリンスポーツだけではない、離島の魅力とは

日本の本土から遥かに離れた小さな離島「宮古島」に本土の人が行けば、当然、数々の初体験をする。緩斜面に延々と続く広大なサトウキビ畑がある。眩しいくらい真っ赤なハイビスカスがある。島々をつなぐ果てしない大橋がいくつもある。市場に行けば、食用として売られているカラフルな熱帯魚を見ることができる。そして、流行が届かないからなのか、流行よりも島の伝統文化を重んじるからなのか、古き良き日本、昭和の日本が残っている。そうした初めて見てびっくりする経験、大げさに言えば「カルチャーショック(≒非日常経験)」が、旅の魅力の一つである(筆者個人的には、このカルチャーショックこそが旅をする目的となっている)。

非日常を感じるのは、なにも食や気候だけではない。人々の習慣や風習も日本離れしているものが多い。例えば、「ガジュマルの樹には、キジムナーという精霊が住んでいる」とか、「オトーリ」というみんなで車座になって同じ杯で島酒(泡盛)を延々と酌み交わす風習なども、まだまだ残っている。島のおじい・おばあは人懐こい。何かあるとすぐにモノをくれたりする。何かあるとすぐに島人は集まってくる。そこは決して排他的ではなく、新しく島に住む人も、観光で来る人も、みんなウェルカムである。

そうした独特の文化、ライフスタイルを楽しめるかどうか、自分なりの島ライフを見出せるかどうかが、離島で働くポイントになるようだ。

自由と責任と楽しむ力

HOTEL LOCUSは、リゾートホテルの敷地内で完結するホテルではなくホテルを拠点に島全体を楽しむホテルである。そこで働くスタッフに求められることはどんなことだろうか。

「ここでは、新しい魅力を開発していくことが求められますので、スタッフには、自らアイデアを出し、それを企画して実行に移せる力を求めます。当社は、そうした『やりたいことができる』会社であるし、将来のビジョンをしっかり持っている人の将来ビジョンを応援する会社です。そのためのキーワードは、自由と責任と楽しむ力ですね」

人生100年時代、数カ月でも、数年でもよいが、都会ではない「リゾートで暮らす」という時期があっても面白い。そうした経験は、一回きりしかない人生をより豊かにしてくれるに間違いない。

Information

ホテルローカス

  • 住所:〒906-0013 沖縄県宮古島市平良字下里338-40
  • 電話番号:0980-79-0240
  • FAX:0980-76-0340
  • ウェブサイト:https://www.hotellocus.com/
  • 客室数:100室

ホテルローカス 支配人
鎌田信明氏 Nobuaki Kamata
1972年生まれ。プラントエンジニアリング業界の技術営業として大手のプラント建設会社に入社。その後、稼業の衛生設備会社に転職。再度、勉強のために大手不動産会社に転職し、賃貸管理やプロパティーマネジメント業務を約10年間勤めあげ、趣味であるサーフィンを楽しむために宮古島へ移住、初めてホテル業界に飛び込む。設備管理に精通していたため、ハード面の準備や仕組み作りの業務に携わり、宿泊部門でのマネジメントや立ち上げの仕事に従事。昨年に沖縄UDS株式会社に入社し、ホテルローカスの支配人に着任。宮古とゲストを繋ぐ架け橋として、いろいろなアイディアを出しながら、日々奮闘中。

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Staff Interview

ホテルには、街の価値を高める力がある。

宿泊マネージャー 高橋 文香さん

以前、京都で「ホテルアンテルーム京都」というホテルの立ち上げをスタッフの一人として担当したことがあったんです。そのホテルの場所が、「え、こんな場所でホテルやれるの?」という人気(ひとけ)の少ない場所だったのですが、ホテルが建って半年もたつと、何となく、周辺の雰囲気がにぎやかになってきたんです。人の流れが変わったというか・・・。つまり、ホテルができたことで街の魅力がどんどん増していきました。人の流れを変える力がある。街の価値、楽しさ、勢いを後押しできる。そんな魅力や力がホテルにはあると実感した出来事でした。

サービススタッフでもホテルの企画・設計に意見が言える

ほかのホテル企業のことはわからないのですが、当社UDSは、ホテルの構想段階で企画担当者や設計担当者に、運営サイドの立場でいろんな意見を言えます。バック動線などの、働くスタッフの使い勝手などについての意見だけではなく、例えば、ソファの色とか、ここに雑貨のディスプレイを配置しましょうといった意見を言えるんです。このHOTEL LOCUSの開業前には、設計・企画・運営のメンバーが集まって、11回も開発合宿をしました。

島を楽しめる力が、仕事力に直結する

リゾートや離島で働く魅力は、なんといっても自分が島を楽しめば楽しむほど、仕事力や接客力が高まるということでしょうか。休みの日には、島を巡ります。食べることが好きなスタッフはレストランや食堂を巡り、ドライブが好きな人は、島をくまなくドライブし、ダイビングが好きな人は、海に出かけます。そうした経験や知識がホテルの価値になります。LOCUSは、大きいホテルではないので、コンシェルジュ業務を全員ができるようにしています。ですので、自分が島をいかに楽しめ、自分のお勧めがどれだけ語れるかがホテルスタッフとしてのパフォーマンスにつながるのです。
私も先日、イタリアンレストランで食事をしたのですが、とてもおいしかったので、「次回、『イタリアンを食べたい』というお客さまには、ここを紹介しよう」と思いました。自分の経験を通して、うわべではない宮古の楽しさを伝える。これが価値になるんですね。

Staff Interview

島の人たちと共に、お客さまをもてなす喜び

宿泊マネージャー兼 素潜り漁師 宮古島漁業協同組合準組合員 高田 和大さん

リゾートホテルで働く魅力は、なんといっても、地元の人と密接につながって、応援してもらって、ホテルや島の魅力発信を一緒にやっていけることです。例えば、お客さまにお渡しする島のマップをホテルオリジナルで創ったのですが、そこに載せるレストランやショップ、アクティビティ、観光スポットなどは、私たちで厳選しました。島の人たちとの関係性を大事に育んで、お客さまにご紹介したいお店を選ぶ。そんな島の方々との一体感が嬉しいですね。そして、島全体でお客さまをおもてなしする楽しさがあります。

自分の趣味が仕事に直結する

私は、モリで魚を突くのが趣味なのですが、それが仕事になっています。海に潜り、泳いでいる魚を突いて獲ります。体長1メートル、体重10キロ以上の魚が獲れることもあるんです。3月には、正式に漁師になりました。漁業組合に入り、私が獲った魚をセリに出しています。もちろん、ホテルのレストランでも提供しています。“ホテルマン漁師”が獲ってきた魚を提供している場所は、日本国中探しても当ホテルだけではないでしょうか?

総支配人はサーファーですし、フロントスタッフの一人はプロのダイバー、料飲スタッフの一人は、トライアスリートです。ヨガ、SAP、サーフィン、シュノーケリングなど、趣味を楽しんでいるスタッフが多いですが、そういった趣味がそのままホテルのアクティビティ開発に直結するのが、リゾートで働く魅力です。

Message

人生の先輩から若者に向けて
「仕事や人生を楽しむコツ」とは?

パーソナリティ

HOTEL LOCUS
総支配人
鎌田信明氏 Nobuaki Kamata

Editor's Note編集後記

UDSさんが運営するホテルをいくつも知っていますが、どこもスタッフが生き生きとしています。ホテルで働いていることに誇りを感じていたり、遣り甲斐を感じているからだと思います。UDSには、働かされているスタッフはおらず、(自発的に)働いているスタッフばかりなのではないでしょうか。逆に言えば、指示待ちスタンスの人は、UDSさんでは仕事を楽しめないかもしれません。自分のやりたいこと、仕事を通して成し遂げたいことをお持ちの人には、最高のホテル企業だと思います。
近藤寛和

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